柔道整復師の業務における保険適用
柔道整復師が「業(ぎょう)」とする骨折・脱臼(これらは応急手当)・捻挫・打撲・挫傷の施術。つまり、いわゆる「ケガ」に対しては各種保険を適用することができます。
しかし、患者様の中には「柔道整復師」という言葉を知らず「マッサージ屋さん」という認識を持っている方も多いのが事実です。
柔道整復師はケガに対する施術を行うことを基本とし、頭痛や肩こりといった「慢性痛」に対しては保険が適用されません。
施術者目線での保険適用
柔道整復師はケガの施術に対して保険適用が可能なので、資格取得後の方向性として「独立・開業」が挙げられます。
施術所を構え、必要な治療機器、人員を確保することで院長として院を経営する方は多いです。
特に最近は柔道整復師が増えており、それに伴って施術所もコンビニエンスストアの数を上回る程に増加傾向にあります。
少し歩いただけでもいくつかの整骨院を見つけることができるのではないでしょうか。
柔道整復師にとっての保険適用のメリット
柔道整復師が保険適用可能なメリットはいくつかあります。
これらのメリットを上手く活用することで、柔道整復師の仕事の幅は大きく広がるでしょう。
柔道整復師にとっての保険適用のデメリット
保険適用が可能だからこそ柔道整復師の活躍の場が増える一方で、デメリットもあります。
柔道整復師が保険を適切に扱うためには、上記のようなデメリット(課題)をクリアしなければなりません。
そのため、資格取得後間もない柔道整復師がいきなり独立・開業を考えても、なかなか上手くはいかないのではないでしょうか。
患者様目線での保険適用
整骨院(接骨院)を訪れる患者様のほとんどは、各種保険を適用した施術を受けています。
中には完全自費メニューだけ、という方もいるかもしれませんが、ほとんどの場合、保険治療や保険+自費メニューという方が多いのではないでしょうか。
患者様にとっての保険適用のメリット
整骨院(接骨院)に通う患者様にとって、施術が保険適用がメリットとなる点はいくつか存在します。
上記のように、患者様にとっての一番のメリットは「費用が安い」ということではないでしょうか。
例えば、1割負担の方の場合、窓口で支払う金額は100円に満たないこともあるので「痛みが軽くなるなら毎日でも通おう」という気持ちになりますよね。
また、高齢者に多い症状の一つに「変形性膝関節症」がありますが、そのような膝の症状はしっかりと施術を行えば症状が改善することも多いです。そのため、患者層で最も多い高齢者層にとっては、保険を適用することで負担も少なく身体の調子も良くなる、といったように嬉しいこと尽くしです。
スポーツを行う方にとっても「テニス肘」や「野球肩」といった症状は保険の適用が可能です。そのため、子供がいるご家庭や趣味でスポーツを行う方にとって、ケガの専門家である柔道整復師にメンテナンスをしてもらうことは自身や家族の健康面でもプラスしかありません。
患者様にとっての保険適用のデメリット
では、一方で患者様にとっての保険適用のデメリットについて以下のようなものが挙げられます。
整骨院(接骨院)に通う患者様にとって、保険適用は多くのメリットを持っています。
しかし、保険の種類や症状によっては保険適用外となることも覚えておかなくてはなりません。
また、柔道整復師は患者様に保険施術の仕組みや適用範囲を説明する義務があります。
そのうえで患者様の同意を得て、初めて保険施術が成立するのです。
つまり、患者様は自身の症状が保険の適用範囲であり、柔道整復師もその旨をしっかりと理解しているかを判断することが重要となります。
その点をあやふやな状態にしてしまうと、最悪の場合保険での施術が終了となり、これまで保険施術で行っていた分の費用を全額負担しなければならない、というような事態になる可能性もあります。
柔道整復における保険適用は取り扱いにご注意を!
柔道整復師の保険適用には、施術者にとっても患者様にとっても多くのメリットがあります。
しかし、保険は国で定められている制度のため、扱い方を間違えてしまうと損を被るケースもあるため注意が必要です。
すでに柔道整復師の方へはもちろん、これから将来、柔道整復師を目指そうとしてる方々へ、少しでも参考になれば幸いです。

柔道整復師・鍼灸師
早津 太一(はやつ たいち) 先生
柔整の学生時代から接骨院での研修を行い、卒業後は鍼灸学科に通いながら柔整師として勤務。14年の経歴の中で大手グループ院の院長などを経験。
テニス肘や野球肩などスポーツ外傷の施術が得意。